ある日、YouTubeを見てると、レーザー加工機を使ってプリント基板(PCB)を作る方法が紹介されていました。
面白そうなので試しに私もFABOOL Laser(FLM3.5)を使ってPCBを作ってみることにしました。
で、割とうまく出来たので、その手順とかを紹介しておきます。
なお、今回の題材につかっているのは秋月で販売されているキャラクタ液晶用のピッチ変換基板です。
上の写真の右上に写ってるものです。
秋月でも変換基板売られていますが、ちょっと高いし、バックライトに対応してないし、固定する為のネジ穴が無いし、で自作してみました。
I2C接続小型キャラクタLCDモジュール 8x2行 – 秋月電子
I2C接続小型LCDモジュール用ピッチ変換基板 – 秋月電子
用意する物
必須の物
- 生基板
- ラッカースプレー(つや消し黒)
- アセトン(マニキュア除光液)
- オキシドール
- 塩
- クエン酸
4~5は、エッチング液の材料で、他のエッチング液でも可
有った方が良い物
- 金切りハサミ(基板切断用)
- 段ボール(塗装用)
- マスキングテープ(塗装用)
- 食品保存用ジッパーバッグ(エッチング用)
- ルーペ(パターン確認用)
- アルミホイル(廃液処理用)
- 重曹(廃液処理用)
手順1.回路データの作成
私は回路をKiCadで作成しました。
KiCadでの作業
KiCadで回路を作成したことが無かったのですが、ネット検索を駆使して見様見真似で作りました。
なので、回路設計についてはここでは省略させて頂きます。
一応、ちょっと工夫した点だけ述べますが、
どこかのブログで見た工夫ですが、穴を開ける部分には0.3mmのドリルを指定する。
0.3mmの丸い穴がセンターポンチの代わりになるので、穴を開ける時に作業がやりやすいです。
あと、シルク面が作れないので、べた塗りの部分を使って文字を表示しました。
回路が出来上がれば、KiCadではSVGファイルでエクスポートし、Inkscapeで画像データ化します。
印刷モードは「モノクロ」
ファイルオプションは「全てを一つのファイルにまとめる」
Inkscapeでの作業
KiCadで出力したSVGファイルの色を変更したり、白黒反転させたりして、最後にPNGファイルに出力します。
Inkscapeでは、なるべく500dpi以上で出力する。
解像度が低くなるとレーザー加工時に荒れたパターンになってしまいます。
あと、縦横の長辺が1023を越えないようにする。
1023以上の画像サイズでは、FABOOLSoftwareでは1023に縮小されて認識される。
あと、エクスポートした時の幅と高さもチェックしておく
レーザー加工時に大きさを指定するのに必要です。
出来上がったパターンの画像
黒の部分が基板の銅箔が剥がれる部分で、白の部分が基板の銅箔が残る部分となります。
今回、回路自体は片面用に作ったのですが、生基板が両面基板しか無くて、しょうがなく裏面用のパターンも作成しました。
手順2.基板の準備
今回買ったジャンクな生基板は格安だけど在庫が安定しないので欲しい基板がいつも売っているとは限らない。
ジャンクな基板なので、表面が結構汚れていたりする。
なので、流し台で金たわしとか使って表面を適当に磨く
生基板にラッカースプレーを塗る。
あまり薄塗りだと、エッチングの際に塗装を越えて銅が溶けてしまうので、ちょっと厚塗りくらいが良い。
今回使ったラッカースプレーは、レーザー光を吸収しやすいように、つや消しブラックを使用しました。
※2019.8
最近、つや有りのレッドで試したのですが、失敗しました。
原因は、表面にクリアの層が出来て、これがレーザーでは焼けずに残ってしまいました。
と言う訳で、塗料はつや消しを使いましょう。
手順3.レーザー加工
マスクパターンの画像を読み込み、加工の幅と高さを画像出力時のサイズを指定。
加工パラメーターは
F1500 P100% 1回
あまり早くするとパターンが荒れてしまうし、遅くすると時間がかかる。
F1500でもかなり時間がかかる。もう少しはやくてもいいかも。
レーザー加工した後は、塗料の燃えかすが表面に残っていてまだ黒い状態。
表面をティッシュで軽く拭いてやると銅箔が見えるようになる
表面と裏面の位置合わせはマウント用の穴を使って行いました。
なので、エッチングの前にマウント用の穴だけドリルで開ける。
今回は2mmのドリルを使って穴を開けましたが、2mmだとけっこう位置合わせが難しいので、もうちょっと大きいほうが良いかも?
位置合わせ用に、台紙に裏面のパターンを刻印
あとから上に基板を乗せるので、パターンの位置はレーザーのヘッドのホームポジションから少し離しておく。
台紙に刻印されたパターンの、マウントホールに合わせて基板を置く。
今回のパターンでは、裏面のマウントホールに十字を描いているので、基板の両方の穴に十字の中心が来るように基板を置きました。
位置決めが終わったら、裏面のパターンをレーザー加工
裏面のパターンの加工が終了。
裏面もティッシュで軽く拭いておく。
ちょっとパターンがズレてるけど、この程度なら問題ありません。
ティッシュで拭いただけだと、まだ塗装の汚れがうっすらと残っています。
きれいに仕上げる為、私はさらに台所用のクリームクレンザーを使って軽く研磨して、残りの塗膜を取り除きました。
パターンのマスクはこれで完成です。
手順4.エッチング
エッチングは比較的手軽なオキシドールと塩とクエン酸を使った方法で行いました。
私はどう言う原理でエッチング出来るのかは良く分かってないのですが、この方法は検索すると結構でてきますので詳細はそちらでお願いします。
参考リンク)
続:クエン酸エッチング (銅用) – akira_youの私見
制作メモ:慣れれば30分。普段使いの基板づくり – DMM.make
この方法、コスト的には市販のエッチング液を使ってもあまり変わらないようですが、全て100均で購入可能というのがお手軽で気に入ってます。
塩1:クエン酸4の割合で混ぜ、オキシドールに溶けるだけ入れる。
と言うことだけど、この割合は結構適当で大丈夫らしい。
===追記===
私がクエン酸エッチングについて知った元ネタの方が最近こんな記事を書かれています。
https://akirayou.net/wp/2022/%E3%82%AA%E3%82%AD%E3%82%B7%E3%83%89%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%82%A8%E3%83%B3%E9%85%B8%E3%82%A8%E3%83%83%E3%83%81%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%81%AE%E3%83%AC%E3%82%B7%E3%83%94%E6%9B%B4%E6%96%B0/
この記事では、オキシドールとクエン酸と塩の割合について研究されていて、とても参考になります。
ここにオキシドールを入れるだけでエッチング液の完成
基板が浸かれば良いので、この量で十分です。
参考までに、だいたい塩1g、クエン酸4g、オキシドール25ml
完成したエッチング液に、マスクパターンを作った生基板を放り込む。
エッチングが進むと、銅箔部分から気泡が発生するので、袋をゆすって気泡を逃がしながら待ちます。
時間にして、10分弱でエッチングが終わりました。
エッチング液は温めた方が反応が促進されて、銅が早く溶けるらしいですが、常温でも十分そうなので私は加熱は無しで行いました。
ティッシュにアセトンを染みこませて、マスクパターンの塗装を拭き取ります。
なお、アセトンは人体にかなり有害らしいので、なるべく吸い込まないように気をつけます。
全部きれいに拭き取って終了。
今回、全部拭き取りましたが、全部拭き取るより、半田付けする箇所だけ綿棒等で塗装を剥がす方が良いかも。
塗装を残した方が、銅箔の酸化が防げて良い気がします。
除光液ですが、通常の除光液よりもアセトン濃度が高いらしい。
もともと、3Dプリンタで作った物の表面処理用に買ったものですが、こんなところで役立ちました。
手順5.部品を取り付けて完成
薄い基板なので金切りハサミでカットできます。
厚い基板(1.6mm)をこのハサミで切ったら基板が割れてしまったことが有ります。
ボール盤とか持って無いので、ピンバイスを使って手作業で穴を開ける。
これが結構大変なので、次から回路の設計は表面部品をなるべく使うようにしたい。
ちなみに、パターンにはバックライト用の配線も有りますが、今回はバックライト無しの液晶を使い、マイコンとの接続はケーブルを直に半田付けします。
なので、開けたのは液晶の足の分の9カ所だけで、0.6mmのドリルを使いました。
ドリルはセットで1000円程の物を買いました。
0.8mmくらいが使いやすいです。
SK11(エスケー11) ミニサイズドリルセット 20本入り SMD-20 – Amazon
タミヤ クラフトツールシリーズ No.112 精密ピンバイス D-R (0.1-3.2mm) 74112 – Amazon
表面実装(1608)のコンデンサ3個と抵抗1個、そしてキャラクター液晶とケーブルを半田付けしてピッチ変換基板の出来上がり。
Arduinoに繋いで動作を確認。
うまく動いているようです。
と言う訳で、以上です。
動画作ってみました。